書道用紙について
書道展作品出展規定に最適な大きさの用紙について
展覧会に出品する用紙のサイズでお困りはございませんか。
半紙屋ではお客様のお好みの大きさに無料でカットいたします。
▶ 半紙屋がおすすめする展覧会用の画仙紙お試しセットはこちらです。
日展
毎日書道展
読売書法展
産経国際書展
書の要素について
書は墨の種類、濃淡、潤滑及び線質(運筆の速さ、緩急、抑揚、筆圧)等による表現をとる造形芸術と呼ばれています。
そして当然のことながら、作品には紙がこれらの要素と深くかかわっています。
書にはこれらの要素のもとになる、篆書、隷書、楷書、行書、草書、仮名の6種類からなる書体(文字の組み立て法) と感情をリズムとして表し、書家の個性が出る書風(字形や筆勢、用筆法)といった別の構成要素もあり、 書を底の深いものにしています。
一般に書と紙が深くかかわってくるのは滲み、墨色、筆のタッチ等の言葉で総称される、 紙の諸物性と墨の種類・用法が絡み合った現象です。 墨の種類の影響
墨はカーボン(炭素)を膠でくるんだものですが、大別して松煙墨(青墨)、油煙墨(赭墨)と膠の代わりに ポリ・ビニルアルコール(PVA)などをカーボンの分散剤として入れた安価な墨液とに分けられます。
特徴としては油煙墨のほうが、松煙墨よりカーボンの粒子が小さい為、紙への浸透性がよく、水と墨の粒子の拡散環が 離れずにじみの先端がぼけてきます。また、安価な大きい墨の粒子をたくさん含むほど線を形成しやすく、滲みにくくなります。
しかしこれは、紙面の繊維密度や叩解程度と方法からくる繊維の太さ、長さ、および蒸解による繊維の浸水性とも 密接なかかわりを持っています。
一般に和墨には、力の強い膠が使用されていますが、PVAを使用した墨は水性塗料に近く、 その低い表面張力の関係で滲みやすく、紙面への定着力と造膜力が大きく、使用後の耐水性もやや生じますが、 塗料様の光沢を生じ、墨色の伸びが悪く、淡墨では墨ムラができやすいようです。
また墨の粒子は礬砂引き加工した紙面上では、同じ膠同士のため、凝集せず均質に散らばって墨色を良くしますが、 ロジンサイズの紙面では団粒してしまいます。
墨の濃淡による影響
よく書家は書き始める前に、使用しようとする紙の上に1滴の墨を落とし、滲み速度を測って、 自分の運筆を加減するそうです。
濃墨では一般にこうして自分の好みのにじみを出しやすいのですが、 淡墨では、紙によって、わずかな墨の濃淡でかなり滲みの拡散環が違い、滲み定着までの時間の長い紙、つまり、 使いにくい紙もあります。
(特に台湾産の紙に多いようです)
書体の影響
線質は運筆の速さ、 筆圧等書風などと密接にかかわっていますが、書体の種類によってもはっきりと類別されます。
漢字の発達の歴史をたどると、周代末期に篆書が生まれ秦代に、より早く書く必要上、隷書が、 そして漢中期には、これをもっと省略した草書、これでは読みずらいことから楷書が生まれ、 この筆画を多少簡略化して、行書が生まれたという経緯がわかります。
したがって、 書体別の運筆の速さは篆、隷、楷、草、行、仮名の順で早くなります。
つまり漢字用ではにじみの強い紙は草書、行書向き、さほどでない紙は、隷書、楷書向きと言えると思います。
ただし、仮名は別で、字体にも曲線が多く、そのためにやわらかい筆が使われますし、 何字も続けて書く為、滲みと吸墨の極めて少ない、表面の滑らかな紙が使われます。
仮名用半紙として薄く抄紙でき、ヘミセルロース分(滲み止め成分)の多い雁皮や三椏の紙が愛用されている所以です。
その他の影響
筆圧や墨の潤滑も紙とかかわってきます。 高い筆圧で書を書かれる方は固い筆で表面が滑らかでない紙を使用しますし、 墨のかすれを好む方は吸墨性の良い紙を使用します。
書道半紙の紙の要素
書道半紙をお使いになるうえで知っておきたい紙の小話
紙が枯れることの影響
書家は年月を置いて枯れた紙を好みます。
和紙は抄紙後、時がたつにつれて、寸法と滲みが安定し、使いやすくなります。
このことを紙が「枯れる」と呼び、科学的には苛性ソーダなどで傷つけられ
不安定な状態にあるセルロース繊維が空気中の酸素などを取り込んで
安定な状態に落ち着くことを意味しています。
これは繊維を苛性ソーダなどの薬品で急速に処理する限り、避けがたい事です。
(苛性ソーダは、繊維を膨張させ内部によく浸透しリグニンなどの
繊維についた樹脂類をよく分解しますがセルロース自身も浸します。
また、亜硫酸ソーダなどは苛性ソーダと比べ浸透速度がやや遅く、
液の成分が変化しやすく、セルロースを浸しにくいが、樹脂分も分解しにくいのです。)
しかし、乾燥時に紙をできるだけ引っ張って乾かせば、吸湿による伸びの少ない紙ができ、
吸湿と放湿を繰り返す処理をすれば、寸法の安定な枯れた紙も作れます。
和紙は洋紙より変色しにくいわけ
書でも何でも、紙に書かれた記録や作品は長期にわたる保存を要求されます。
そしてそこでは変色の少ない紙が重用されます。
紙の変色はセルロースの酸化と残留リグニンが光と酸素の作用で変質し、
色素になることによって生じます。
洋紙は原料の木材パルプに不純物が多く、機械によって繊維が傷つけられ、
添加薬品が繊維の変質を助長するため、また木材パルプにリグニン含有量が多い為、
非常に変質しやすくなります。
その点、和紙の靭皮繊維は非常に長く分子量の大きい重合度の高い繊維で、
リグニン含有量も微小ですから、非常に変色しにくいわけです。
紙の寿命のはなしでよく、洋紙百年和紙千年といわれるほどに和紙の寿命が長いのは
この理由によるのです。
(セルロースは、元来、非常に酸化されにくい物質ですが、重合度が低かったり、
不純物が多いと末端の還元基より酸化を受けます。)
寒漉きの紙
古来より、和紙は寒漉きのものが良しとされています。
これは、寒い時期には、水温が低く、不純物の溶解度が低く、純粋な製品が作れるし、
バクテリアも発生せず、ネリもよく効くからです。
しかし最近の抄紙には水温のあまり変わらない井戸水を使ったり、
ネリの貯蔵薬品が良くなっていますので、現在では夏でも寒漉きとあまり変わらない紙が
できています。
製紙側の対応
書道の紙にはこれが絶対に誰にも適するといった紙はありません。
書き手の腕や書風によってそれぞれに適した紙があるわけで、それが書道の紙を多くしています。
たとえば、多くの書家に愛されている中国の宣紙はその原料のセルロース繊維を傷つけぬように約 10か月近くもの時間をかけ、ゆっくりと原料を処理し、また抄紙時の水が硬水でもあるために枯れた紙 (セルロース繊維画安定した状態にあり、寸法の安定した紙)ができています。
原料はたん皮と呼ばれるニレ科の樹の比較的短い靭皮繊維が主で、繊維密度が高い為、 薄い紙で緻密なにじみが得られますが、反面、強度的に弱く、紙が筆にくっつきやすく、一般的には書きづらいようです。
和紙の特徴は、セルロースの重合度が高く、長い靭皮繊維を原料として使用し、抄紙法が流し漉きである点で、 他に類を見ない薄くて、強靭な紙ができます。
そして、この和紙にも墨書きのために、書きやすく、 墨色・にじみを良くするいろいろな試みがなされています。
つまり、紙面を滑らかにするために、石、 貝殻、動物の牙、椿の葉などでこすったり、紙に米の粉を添加したり(墨と米の澱粉のくっつきやすさを利用)、 粘土を混ぜたりした紙もあります。
でも、根本的に良い書道の紙を作る基本は蒸解による紙の繊維の浸水性・ 紙との親和性(繊維中のヘミセルロースやリグニンの含有量に関係)と叩解程度と方法とに関連した繊維の太さ・長さと 紙面の繊維密度等に影響を受ける紙面上での墨の横方向への拡散性と縦方向内部への浸透性のバランスを うまくとることが肝心です。
ふつう強靭繊維のセルロースは重合度が高く、また木材パルプは繊維に残留付着しているリグニンなどの 関係で側面からの給水は起こりにくく、墨を繊維長さの方向に誘導します。
また紙の吸水性は、繊維の切断面で生じています。従って書道の紙に関しては、紙の強度には反比例しますが、 滲みや地合いの点でできるだけ繊維を傷つけずに短く切り(遊離状叩解し)(ただしかな用は逆) 墨色の深さや立体感を出すために、その短く切った繊維を立てたほうが良いようです。
またこの滲みの点では、何回も再生され、リグニンが取れ側面からも吸収するようになった故紙パルプをうまく 利用している紙もあります。
ただし、同じパルプでも資源の関係で比重が針葉樹から短繊維の広葉樹に移っていますし、木の種類、 伐採時期(夏に切った幾何、冬に切った木か)シーズニングの長短、導管の有無。蒸解法等によって毎回同じ原料が 入ってくるはずもなく、製品として常に同じ墨つきの紙を供給するためには、多くを経験による人の勘に頼らねば ならないのも事実です。
和紙の墨つきは非常に微妙なものです。
蒸解から乾燥まで、 すべての工程の影響が紙の性質に現れますし、色紙等の紙製品に仕上げる場合にでも、 合紙機のローラー圧や張り合わせに使う糊によっても、その墨着き、書き味は大きく違ってきます。
今後の定量的な研究を俟つことの多い分野です。
紙の大きさについて
寸法が8寸×1尺1寸(24.2センチ×33.3センチ)の紙を呼び、8世紀以降の 公用紙(寸法8寸×2尺2寸位)を半分に切って使ったところから この名が生まれています。 |
<しかしながらこれは、全国で統一された寸法でないため、 今でも各産地で多少寸法の違うことがあります。 |
昭和38年、天皇陛下愛媛県ご来県の折、当社の手漉き改良紙(記録保存用紙)を献上させていただきました。 |
こちらの半紙は画仙目です。簾の目の間隔が小さいものをいいます。
|
手漉きの半紙の半紙目の簾は竹製です。 こちらの半紙は半紙目です。
当社の機械漉き半紙の簾は、プラスチックワイヤーです。 書道ははじめ、半紙から書き始められるため、達者になってから使い始める画仙紙と比べて滲みも比較的少なく作られています。 |
かな用半紙では、三椏、雁皮等上等な繊維成分が多いほど素晴らしい薄い紙が漉けます。 |
画仙紙の大きさと種類
各種公募展にご出品の方はこちらに主な公募展の規定サイズをお知らせしたページがございます。
画仙紙は中国から伝わったもので、種々の寸法のものが作られています。 |
|
|
一般的には、書道用としては薄手のもの、(学童用は別)墨絵等絵画用には一層厚漉 または、二層、三層漉の厚手のものが好んで使われています。 |
1 料紙または懐紙 |
約50センチ×36.5センチ前後の寸法の楮や雁皮の紙を全懐紙と呼び、半分に切った36.5センチ×24.5センチの寸法のものを、小料紙または半懐紙と呼んでいて、かな書道用に使われています。 |
従来は展覧会への出品 清書用として手漉きの純質の紙に加工画仙紙同様の加工を処した高価なものが主体でしたが、最近は、練習用として純白ロール紙に色・模様を印刷したり、機械抄き奉書やこれに礬水引き 色・模様・金粉などを印刷したものがあります。 |
2 唐紙 |
画仙紙と似ていますが、竹パルプで抄紙された黄褐色の紙を読んでいます。 きめが細かく、画仙紙よりにじみが少なくて墨もあまり吸わず、細字用に多く用いられています。 |
3 鳥の子紙 |
本来は雁皮主体の紙肌が鳥の卵のような紙を読んでいましたが、現在は木材パルプにマニラ麻を混ぜた卵色の紙が鳥の子紙として広く流用されています。滲みが少なく、線がはっきり出るので面白味に欠け、書道にはあまり多く使用されません。また原料のマニラ麻も手に入りにくくなっています。 |
書道半紙・画仙紙について
書道半紙は以下のように漉き方で分類することができます
円網(まるあみ)抄紙機製
漢字用
通称パルプ半紙 表面がつるつるしていてにじまない 学童向き
かな用
純白ロール紙
短網(たんもう)抄紙機製
漢字用
通称 模造半紙(当社の半紙はこちらです)
竹パルプ混合のもの 紙質はもろいが墨の吸収がよく大文字向き
線とにじみの差がはっきりするのが特徴
稲わらパルプ混合のもの 水の吸収が良い
楮を使用したもの にじみが強い
流し漉き
漢字用
木材パルプ、マニラ麻、わら混合のもの楮混合のもの
かな用
楮(礬水引き どうさびき)加工処理したもの
紗漉き
溜め漉き
故紙原料などのパルパーを使用した「生打ち」 平釜、地球釜による高圧蒸解製造法
また(中国で行われている)生化学的パルプ化処理や、叩解の程度と方法、
乾燥等によっても大きく変わってきますので、材質以外の分類も十分に考えられます。
また、紙は同じ材質でも、良くシーズニング(紙を適当な温度、湿度の空気中において性質を調整すること)され脱リグニン処理をされたものかどうかでや、
その材質の植物の種類でも違ってきます。
同じ短網抄紙機製の一般に模造半紙と呼ばれる半紙にも多くの種類がある所以です。